建設業法に「著しく短い工期の禁止」というものがあります
令和元年の改正で新しく追加されたもので
働き方改革のために新設された条項です
建設業界の人手不足が背景にあり
長時間労働の是正を目的にしています
著しく短い工期とはどの程度の期間のことなの?
国交省のガイドラインでは
「工期基準等に照らして不適正に短く設定された期間」となっています
分かりにくいですね・・・
そもそも建設業は製造業などとは違い同じものなど造れないので
こういう示し方になるのですが
・工期基準で示された内容を踏まえていない場合
・過去の同種類似工事の工期と比較して短い場合
・受注者が見積書で示した工期と比較して短い場合、など
「総合的に勘案して、個別に判断されることになる」、が結論です。
注意点としては
発注者と受注者で合意がある場合でもNGとなることや
工事内容が変更になったり、受注者の責めに帰さない理由で工事の進捗が
遅れた場合にも該当することになることです
罰則はあるの?
「国土交通大臣または都道府県知事は発注者が規定に違反している事実があり、
特に必要があると認めるときは、当該発注者に対して必要な勧告をすることができ、
発注者がその勧告に従わないときは、その旨を公表することができる」
と規定されています
簡単にいうと、
行政は発注者の任意の協力のもと改善を求めて、
従わないなら公表することもできるんだよ
と言っています
時間外労働と36協定
長時間労働の是正を行うために、
建設業法は「著しく短い工期の禁止」の規定を設けました
では、長時間労働とはなにを指すのか?
時間外労働がどういうものなのかを知れば理解できます
前提として、法律で定められた労働時間があります
1日、8時間 1週間、40時間 これを法定労働時間といいます
休日は原則として、毎週少なくとも1回、これを法定休日といいます
時間外労働とは
法定労働時間を超えて労働すること、
法定休日に労働することを指します
この時間外労働を行わせる場合に必要となるのが36協定です
行うことができる時間外労働は
月、45時間 年、360時間となっています
この時間を超えたものが長時間労働となります
・特別条項付きの36協定
臨時的な特別な事情がある場合に締結されるのが
特別条項付きの36協定です
むしろこちらの方を締結しているのが、建設業では一般的です
この協定を結ぶことで今までは上限なく時間外労働を行わせることが
可能となっており、罰則がなく強制力がありませんでした
そこで労基法が改正され罰則付きの上限規制が規定されました
2019年4月から施工され建設業では5年間の猶予期間がありましたが
2024年4月からこれが適用されます、これが2024年問題です
・時間外労働が年720時間以内
・時間外労働と休日労働の合計が100時間未満
・時間外労働と休日労働の合計について
「2か月平均」「3か月平均」「4か月平均」「5か月平均」「6か月平均」
がすべて1月あたり80時間以内
・時間外労働が月45時間を超えることができるのは、年6か月が限度
このルールが建設業ではすべて適用されます
災害の復旧・復興事業は適用除外の扱いです
このルールに違反した場合に6か月以下の懲役または30万円以下の罰金
という重い罰則が科されるおそれがあるということになりました
月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が150%に
引き上げられることに注意してください
・まとめ
今回は労務管理の視点も踏まえて「著しく短い工期の禁止」を見ていきました
この規定は時間外労働の上限規制を守らせるために
工期が延びてしまうことへの配慮であり
それを法的に担保するため業法違反としたものでした
時間外労働の上限規制の問題は
企業にとって非常に大変な課題ではありますが
工夫によって乗り越えていくことができる課題でもあると思っています
法令を遵守することで企業価値を高め雇用を確保することは
企業にとってとても重要であると思います
ご不明な点があれば、お気軽にご相談ください